コラム

ビジネスパーソンのためのグローバルコミュニケーション講座 Vol.1

グローバル

多様な人々が集うグローバルな社会では、内容が速く正確に伝わる、わかりやすいコミュニケーションが求められています。ビジネスシーンでこのような課題に直面されている方も多いのではないでしょうか。
例えば海外向けのIR情報発信においては、専門用語なども含まれてくるため難解な表現になることもあり、スムーズなコミュニケーションを阻害してしまう可能性もあります。
Nikkei Asian Reviewでは、企業が抱えるこうした課題を解決するために、長年のメディア活動を通して培われた取材力とノウハウを活用して、グローバルビジネスにおける情報発信をお手伝いする多くのソリューションを提供しています。
トップインタビューや海外向けIR情報発信など目的とご要望にあわせてベストなご提案をさせていただきます。

今回は、ビジネスコミュニケーション上の課題を解決する一つの手段として、簡潔に平易な言葉で伝える「プレイン・イングリッシュ」の考え方を紹介いたします。ビジネスおよび対外広報・広告等において活用できる「プレイン・イングリッシュ」の利用法をプレイン・ランゲージ国際標準化ISO/TC37委員でありエイアンドピープル代表取締役の浅井満知子氏より3回シリーズでご寄稿いただきます。

近くISO規格化が予定される 伝わる短い英語 『プレイン・イングリッシュ』

イギリス、アメリカ、カナダ、オーストラリアなどの英語圏においては、効率的に要点が伝わる平易な英語『プレイン・イングリッシュ』の普及が、法的義務化を含めて政府公認の形で進められています。アメリカでは公的文書はもちろん、コミュニケーション戦略として、歴代の米国大統領の演説や企業トップのスピーチやプレゼンテーションなどで、説得力のある情報伝達術として『プレイン・イングリッシュ』が定着しています。

『プレイン・イングリッシュ』は、およそ半世紀前にイギリス、アメリカ政府が、より良い公共サービス実現のための施策の一環として市民に向けて平易な表現で情報開示をするために考案したコミュニケーション術です。その効果は、当初の期待を大きく上回り、市民からの問い合わせの数が激減し、財政コストの大幅な削減へとつながりました。また、アメリカのある金融機関では、消費者契約を『プレイン・イングリッシュ』に自発的に書き換えたことで、契約書の難解さに起因する顧客への訴訟が減少し、社会的な評価が高まりました。多くの企業がその効果に着目し、「プレイン・イングリッシュ」はアメリカの経済界に瞬く間に広がりました。

現在では、どの国においても、官民を問わず、SDGsやESGをキーワードとして、活動の公正さ、透明性、社会性が問われてきています。グローバル社会において企業が各ステークホルダーへの適時・適切な情報開示を行う際に、「プレイン・ランゲージ」の活用は、効率的に企業が伝えたいことを伝達できる効果が期待できる一つの手段となりえます。

ISOが『プレイン・ランゲージ』の国際規格化を2019年9月に採択

私たち日本人にはあまり馴染みのない『プレイン・ランゲージ』ですが、英語圏に限らず、ヨーロッパ、南米でも自国の言葉をプレイン・ランゲージ化(言語の平易化)する動きが盛んです。この世界的な動向を受けて、昨年2019年、国際標準化機構(ISO)は『プレイン・ランゲージ』を国際規格とすることを採択しました。現在、世界50か国のISO委員会メンバーが、『プレイン・ジャパニーズ』を含む、およそ50か国の言語での規格・基準の策定を進めています。

来る規格・基準は、『読み手に誤解なく理解してもらう』ことを基本理念として、読み手の読解力への配慮、情報の整理、シンプルな単語、短文、一読して理解ができる、などの『プレイン・イングリッシュ』の考え方を基本骨格として策定される見込みです。

「プレイン・ランゲージ」を使用することで、必要なステークホルダーとの間で、次のような効果が期待できます。

1.あなたの所属する組織に対し、相手の理解が深まる。
2.あなたが発信する情報に基づき、相手が的確な判断が下せる。
3.相手とのコミュニケーションが良好になり、信頼関係が高まる。
4.プレイン・ランゲージを使っているので、Webサイトや電子媒体、動画などの発信力が高まる。

今後、情報のデジタル化、すなわち情報伝達のスピードアップが急速に進む中で、上記の効果が期待できる「プレイン・ランゲージ」の必要性は増していきます。例えば、EUでは2018年に『オンライン・プラットフォーム規則』が制定され、先般、日本でも「特定デジタル・プラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律案」が閣議決定されました。これらの法規制は公正で透明なコミュニケーションを求めており、「プレイン・ランゲージ」がその有力なツールとなり得ることが考えられます。

次回は「プレイン・イングリッシュ」を海外向けIRなどビジネス上のコミュニケーションで用いる際の基礎的な考え方をご紹介します。

執筆者紹介:
浅井満知子氏

株式会社エイアンドピープル 代表取締役
青山学院大学経営学部卒業。同大学大学院 国際政治経済学研究科修士課程修了。
IT企業を経て、翻訳会社に入社。
1998年翻訳・通訳会社「エイアンドピープル」を設立。英文IRを強みとする。2000年に日本の大手自動車メーカーのインド進出に向けた、英文ドキュメントをプレイン・イングリッシュ仕様で作成する要請を受け、プレイン・イングリッシュの戦略的で効果的な英文コミュニケーションを研鑽する。
2010年から、日本IR協議会の支援のもと、上場企業の広報IR担当者向けのプレイン・イングリッシュのセミナーを毎年東京と大阪で開催。
2019年4月に、日本初のプレイン・イングリッシュの普及推進団体JPELC(ジャパン・プレイン・イングリッシュ・アンド・ランゲージ・コンソーシアム)を設立。2019年11月よりISO/TC37/WG11(Plain Language Project)ドラフト作成委員会委員。

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