コラム

【識者インタビュー】景気後退期こそ広告費を増やせ

新聞

新型コロナウイルスの感染拡大により、経済活動が停滞しています。このような経済活動の収縮時にどういうマーケティング活動を行うのが良いのでしょうか。

今回ご紹介するのは、小泉眞人東海大学文化社会学部教授による研究結果です。
先生の研究によると、日本が体験した2度の景気後退期における企業の広告費の伸び率と売上高の関係では、景気後退期に支出を増やした企業では売り上げが上がる傾向があるようです。

小泉先生には、日本経済新聞社では2009年に「いま、広告が何をしてくれる?」をテーマに有識者を対象に行ったインタビューにお答えいただきました。

今回はその際の内容を再構成し、お届けします。

広告宣伝費に連動して伸びる売上高

 景気後退期に広告宣伝費を増やすか、減らすか。それが、その後の売上高の伸びを決する「成長要因」になる。私は長年、企業の広告宣伝戦略を研究しています。過去の景気後退期に注目して広告宣伝費の伸び率と売上高を調べたところ、宣伝費と売上高の間に顕著な相関関係があることがあきらかになりました。
 「図1・図2」は、日本が最近経験した2度の大きな景気後退期(バブル崩壊後の1991-93年度、ITバブルがはじけた2001年度)における広告費の増減によって調査対象企業を4グループに分け、グループごとに売上高がどのように推移したかを分析しています。

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 これを見ると、どちらのケースでも、景気後退期に広告費を増やしたグループはその後も堅調に売上高を伸ばしています。とりわけ、対前年比で10%以上増やしたグループの売上高の拡大が突出しています。
 これに対して景気後退期に広告費を削減または抑制したグループは、売上高が長らく低迷しています。特に前年比10%以上削減したグループは、売上高をもとの水準に戻すのに実に6年もかかっています。

2年目がV字回復のカギ

 さらに分析すると、「景気後退2年目」の広告費の増減が、その後の業績を左右する分岐点になることがわかりました。それを表しているのが「図3・図4」です。

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 「図3」は2001年度の景気後退の局面で広告費を前年度以上に支出したにも関わらず、売上高を減少させた138社の広告費と売上高の推移を示しています。これらの企業は、2000年度を「100」とすると、後退期1年目の広告費は「115」と積極的に支出しましたが、2年目の2002年度は「107」に落としています。このグループは売上高を後退期以前の水準に戻すのに長い時間がかかったことがわかります。
 一方の「図4」は、これら138社の内、後退期2年目の2002年度に売上高を「100」以上に戻した「V字回復企業」69社を取り出した結果です。V字回復企業は後退期2年目以降も、1年目の「115」とほぼ同水準の高い広告費支出を維持していたのです。
 つまり、「景気後退2年目以降に広告費を維持するか、削減するかで、その後の売上高に大きな差が出る」ことを、この分析結果は示していたのです。内閣府は先ごろ、今回の景気後退局面が「2008年2月に始まった」とする見解を発表しました。とすれば、今年2009年はまさしく「景気後退2年目」になります。いまこそ日本企業は広告宣伝戦略の在り方を再構築し、より積極的な方向へ舵を切る時ではないでしょうか。成長を志向する企業にとって、「広告宣伝は成長のバロメーター」といえます。
(以上、2009年7月13日朝刊掲載より)

あとがき

今回は、2009年当時に行ったインタビューを再構成してご紹介しました。
小泉先生から、今回の再掲載に当たって改めてコメントをいただきました。
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 この度は景気後退期における広告費研究について再掲載を頂き、誠にありがとうございました。
 時代は進みましたが、景気後退期の2年目が分岐点という“不況期二年目仮説”は、2020年から2021年においても当てはまるのではないかと考えています。20数年間、広告費に関わる研究をしてきて分かったことは、”広告費が業績回復の推進力になる”ということです。
 不況期こそ、積極的に広告費を推進力として活用すべきです。
 来年に企業の業績を回復させるためにも、今年は広告費を減らさない努力を、そして来年は、積極的に広告を展開することが大切です。それは消費者のみならず、社会に対して、さらには従業員に対しても、大きなメッセージになるはずです。
 まさに景気後退期は広告のチカラが試されるときなのです。
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日本経済新聞社が行っている日経企業イメージ調査では、認知度が同程度の企業の場合、広告接触度が高い企業ほど、イメージ総量や一流評価、株購入意向などが高くなる傾向があることがわかっています。
広告活動というと、商品のプロモーションや認知度向上ということが想起されがちですが、信用力の証左など別の側面もあります。経済活動が委縮しているときこそ、積極的な広告活動が次の成長のためのエンジンになるのではないかと考えています。

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