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FT - IPA共同論文 ―広告継続企業、回復局面ではより力強い成長―

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FT - IPA共同論文 ―広告継続企業、回復局面ではより力強い成長―

このたび、不況期でも広告出稿が大事であるというテーマで、フィナンシャルタイムズと英国・ロンドンの広告研究所The Institute of Practitioners in Advertising(以降IPA)が共同で研究した論文が出ましたので、以下にご紹介します。

新型コロナウイルス感染拡大の影響で先行き不透明なこの時代。英国をはじめとする先進国経済は2020年、景気後退局面に入るだろうことが確実視されています。広告の経済的な効果を実証するためにIPAが1980年にEffectiveness Awardsを開始して以来、英国では4回目の景気後退期となります。しかし、今回の景気後退は、これまでのような消費者の需要減や金融危機などによるものではないという点で異なっています。

新型コロナウイルスの世界的な大流行を受けて、英国政府は感染の流行を遅らせ、公衆衛生を守るために、旅行や働き方、お金の使い方などのライフスタイルを大きく変化させるよう国民に求めました。しかし、このような状況下でもビジネスリーダーにとって最も関心のあることのひとつは、「自社のビジネスが景気後退と景気回復いずれにも備えるために、どのような判断をするのが適切なのか」ということです。

意思決定は過去の事例やデータに基づいて行われるのが最善手です。そこで以下に、過去事例やデータから読み取れる広告出稿に関するヒントをご紹介します。今回の景気後退は、これまでとは異なった様相を見せていますが、だからといって景気回復までもが特殊なものであるとは限りません。

“周り”が静かな時こそ、“あなた”の声は大きくなる

景気後退期に広告費を減らすことにより、短期的な利益を確保する企業があります。しかし、生き残りのためにやむなく支出を減らしたり、広告に掲載する商品を提供することができないといった状況でない限り、競合他社と比べて広告予算を減らすことは高いリスクを伴う戦略といえます。IPAなどによると、このような動きは、市場シェア喪失や売上減をもたらし、長期的には利益回復の遅れにつながることが分かっています。

図1は、Malik Profit in Market Strategy (PIMS)が、01年およびそれ以前の景気後退期に関して、1,000の企業から収集したデータです。01年とそれ以前どちらのデータを見ても、マーケティング費用の割合を増やした企業の方が、予算を削減したり維持したりした企業よりも、景気回復後2年間の市場シェアの伸び率が高いことが分かります。

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このことは、08年から09年にかけての景気後退期に関するIPAのEffectiveness Databankの事例報告書でも明らかになっています(図2)。この中で、LinkedInのB2B研究所のマーケティングコンサルタント、ピーター・フィールド氏が、景気後退期におけるESOV(Extra Share of Voice)の高さ別の市場シェア増加率を調査しました。ESOVとは、広告量シェアの数値(SOV:Share of Voice)から市場シェアの数値(SOM:Share of Market)を差し引いたものです。それによると、ESOVが高い企業は、低い企業と比べて、将来の市場シェアの伸び率が数倍になることが分かりました。

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しかし、景気後退期にSOVを高めることは、必ずしもより多くの広告費を費やさなければならないということではありません。ESOVは相対的な尺度です。他の企業の削減量が多い場合は、予算を維持したり、場合によっては予算を削減したとしても、高いESOVを維持することができます。

消費者からの共感を意識したクリエイティブ

一方で、効果的な広告出稿のためには、どれだけ多くの予算をかけるかということと同じくらい、その広告のクリエイティビティも重要です。例えば、08年から09年にかけての景気後退期では、Hovis(英国のパンのブランド)とVirgin Atlantic(英国の航空会社)がSOVを増加させました。しかし、両社の競合他社もSOVを同様に増加させたため、総支出額は依然として競合他社には及びませんでした。

そこで両社は、そのブランド力と過去のキャンペーンの経験を生かした広告を出稿しました。その結果、消費者の間で再び話題になり、改めて消費者からの好感を獲得することができたのです。

例えばHovisは、1970年代の有名な広告「Boy on the Bike(自転車に乗った少年)」を復活させ、英国の歴史上の様々なイベントで彼を映し出し、「As good today as it's ever been」というセリフで締めくくりました。

Virgin Atlanticは25周年を記念して、80年代のポップスと「Still Red Hot」というスローガンを大きく取り上げたアップビートなテレビ広告を発表しました。

他にも、Sainsbury’s(英国のスーパーマーケット)の「Feed Your Family For a Fiver」や、Heinz(米国の食品メーカー)のマルチプロダクト戦略「It must be Heinz」などの、景気後退時に展開された広告キャンペーンでは、「景気後退で苦しむ消費者の現実的で感情的なニーズに応えるブランド」と自らを位置づけることで、消費者からの好感獲得に成功しています。

経済発展を予測することができないのと同様に、このようなクリエイティビティを再現する雛形はありません。しかし、将来が不透明であるとき、広告の価値に関する過去の事例は大いなる教訓と好機をもたらしてくれるでしょう。

<了>

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