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FT - IPA共同論文 Vol.2 ―先が見えない時でも、ブランドの信頼性がものをいう―

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FT - IPA共同論文 Vol.2  ―先が見えない時でも、ブランドの信頼性がものをいう―

先日のコラム に続き、フィナンシャルタイムズと英国ロンドンの広告研究所The Institute of Practitioners in Advertising(IPA)が共同で研究した論文をご紹介します。今回のテーマはブランドの信頼性。日本における企業・商品ブランディングにおいても参考になりそうです。

どんなに大変な時代にあっても、ブランドが私たちの生活に深く関わっているのは変わりません。そしてブランドをより親しみやすく、信頼できるものにするのが広告です。今のように先が見えない時代は特に、消費者はブランドが備える価値を求めるものです。

IPAは約40年にわたり広告事例とデータを収集し、広告で効果的にブランド力を高めるにはどうすればいいかを探ってきました。そこで分かってきたのは、詳しくない分野の仕事をしたり、知らない商品を買ったりする際に重視されるのはブランドの“信頼性”だということ、そしてその信頼性を高めるのは、ぶれない姿勢で継続的にキャンペーンを継続するということです。

信頼性、確保には長い道のり

ブランドの信頼性は獲得するのは難しいのに、失うのは簡単です。IPAの分析でもその事実は明らかで、ブランドの信頼性は時間をかけて少しずつしか醸成できないということが分かっています。
しかし、信頼性がもともとそれほど高くない業界や、消費者が購入するブランドをあまり替えないような(ブランドスイッチがまれな)分野では、信頼性を高めることでブランドを差別化し、市場で生き残ることができます。
分析によると、人の感情に訴えかけるような広告戦略をとっている企業の多くが、ブランドの信頼性が向上したと報告しています(図表1) 。

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普通なら、マーケティング担当者はブランドの信頼性よりも、図1にあるような他の指標を向上させようとするでしょう。しかしそれは、ブランドの信頼性は獲得するのがとても難しく、予想外の出来事が起きたときに初めて評価されるようなものだからかもしれません。

評価を取り戻した事例 ―全英住宅金融組合―

2010年代半ば、英国の当座預金の乗り換え者数は長期的に減少傾向にありました。調査会社YouGovの17年の調査によると、金融危機を受けて、英国人の55%が「銀行は消費者の利益を考慮しておらず、信頼できない」と回答していました。そのような状況下で、比較的小規模な金融機関である全英住宅金融組合は、より存在感を発揮する必要がありました。
そこで同組合は、人々が感情豊かに自作のポエム朗読パフォーマンスを行う“Voices”というシリーズ広告を展開しました。

その目的は、競合他社とは一線を画した信頼できる企業であることのアピールです。
多くの広告予算を投入したこともあり、このキャンペーンは金融業界でたいへん話題になりました。信頼性をはじめ、同組合に対する英国人の評価も改善しました(図表2)。
同組合は、当座預金の乗り換え先としてまず一番に検討されるブランドになり、当座預金新規口座開設数と乗り換え者数のシェアはともに増加しました。

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評価を取り戻した事例 ― ヨークシャーティー ―

ヨークシャーティー(英国で販売されている伝統的な紅茶ブランド)は15年当時、業界3位の売り上げでした。そもそも紅茶業界自体がそれまでの3年間で22%縮小していました。
そこで他ブランドから顧客を獲得するために、同社の「何事にも妥協しない姿勢」と「細部へのこだわり」を描いたキャンペーンを展開しました。テレビCMでは、従業員役として著名人を起用するなどして、同社のひたむきで一生懸命な企業文化をユーモラスに表現しました。

その結果、ヨークシャーティーを飲まない人たちまでもが、「信頼でき、プレミアム価格に見合うブランドである」と言うようになり(図表3)、ヨークシャーティーのバリューシェア(金額ベースのシェア)は3位から2位に上昇しました。計量経済学的な分析をしたところ、これらの広告で、同社は過去に投資した1ポンドが2.61ポンドになるという成果があったことがわかりました。

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これら2つの事例を紹介しましたが、変化が速く、先行きが予測しづらい現在において、これらの展開が必ず成功に結び付くということではありません。しかし、良い時も悪い時も信頼されるブランドを育て続けることの重要性は変わらないということは間違いないでしょう。

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